第六話「謀叛の堕天使編」

 

 地底を照らす人工太陽の塔。

 サンダルフォンは自室にて椅子に深々と腰を下ろし、原始的な地球人の音楽に耳を傾けていた。曲目はマタイ受難曲。堕天使が耳を傾けるには些か洒落が利きすぎというものではあったが、そうした事にサンダルフォンは冷笑的で、意に介さなかった。また、こうした音楽は実際の天界に於いてはまるで理解されないであろう事もサンダルフォンは知っていた。サンダルフォンにしても、堕天して受肉するまでは、これら原始的な音楽は、さながら破れた配管から、風が漏れ出す音くらいにしか感じなかったであろう。

 また、室内は紙とインクの匂いがこもっている。大量の本が書棚に収まりきらず、方々に積み上げられている為である。

 物質的な肉体を有するようになって訪れた、こうした人間的な嗜好は当初サンダルフォンにとって驚きと、ある種の郷愁感を持って迎え入れられた。もっとも、それも今は苦々しい思い出と共に薄れつつある。天使としての自覚と志向の変化はわずかなせめぎ合いを見せ、それは冷笑的な虚無感に飲み込まれていったのだ。

「おやおや、機械の神の覚えめでたきサンダルフォンに、こんな野卑な趣味があったとはね。神の玉座に侍る君の兄上がこの有様を見たら、さぞかし嘆き悲しむだろうね」

 声の主は淫欲の悪魔ベリアルであった。往年は彼も美しい天使の姿を有していたが、神によって異空間に幽閉され、サンダルフォンによって機械魔として復活させらてからは、見るもおぞましい邪悪な姿をしていた。

 もっとも、彼を知る者はそれこそがあるべき姿だと、内面に伴った姿になっただけだと感じるだろう。

「そんなくだらないことを言いに現れたのか?」

 ノックも無しに現れたベリアルに対し、サンダルフォンは冷たい視線を向けた。

 大袈裟に肩をすくめてみせるベリアル。

「くだらないとは、随分な言い方だな。僕は嘆いているんだよ?だって、そうだろ? 宇宙の中心、天界に於いて、君と兄上に総ての天使達は憧憬したものだった。それが、今ではこんなみすぼらしい部屋の主となって、不快極まりない雑音に聴き惚れている。これが嘆かずにおられるかい?」

 ベリアルの言葉に、サンダルフォンは片方の眉を僅かに動かしただけであった。小さく溜息をつくサンダルフォン。

「用件は何だ?」

 質すサンダルフォンに対して、ベリアルはまたも肩をすくめてみせる。

「幽閉空間で神の獣ケルビムを数匹見つけた。手を貸してくれれば顕現させることができる。どうだい?大きな戦力になると思うが」

 ベリアルの言葉に、サンダルフォンはやや興味を引かれた顔を向けた。

「好きにすれば良かろう」

 その言葉に、ベリアルは満足げな笑みを浮かべる。

「ありがたいね。………それはそれとして、地上のエネルギー伝達網を進化させてどうするつもりだい?」

 サンダルフォンは再び視線を虚空に向け、ベリアルの言葉を黙殺した。

「天使を一人使って、極秘に任務を遂行させているみたいだが、それはどうしてだい?」

 憮然としたサンダルフォンとは対照的に、ベリアルの調子は面白がっていた。そもそも、サンダルフォンが自分の問い掛けに応じるとは思ってはいないのだから。

「あれは高等生物のシナプス系を模している。つまり、あれが機械の神に対するもう一つの切り札じゃないのかい?」

「……………」

 サンダルフォンはやはり答えない。

「まあ、いいさ。それより、どうやら約束は守ってくれたようだな。可愛い花嫁がもうすぐ到着すると言うじゃないか」

 そう言うとベリアルは音もなくサンダルフォンの部屋から消えた。

 ベリアルが消えると、部屋の片隅にある染みのような黒い影に、サンダルフォンは目をやり、見つめた。そこには天界に於いてのかつての栄光と、その後の追放の様、白鳥座での天界軍との戦いがまざまざと映し出されていた。

 物思いに耽るサンダルフォン。暫く後に彼は小さく呟いた。

「………私はサタンだ」

 

 ベリアルはサンダルフォンの部屋を出ると、扉に一瞥を向けて鼻を鳴らした。彼にはサンダルフォンの大義などは無用だったし、また、サンダルフォンが彼を利用しているにすぎないことも分かっていた。サンダルフォンが欲しているのはベリアルではなくベリアルのサタンとしての力なのだ。

 おそらく、グリゴリ、或いは地表で行われているもう一つの計画、またはベリアルを凌駕する強力なサタン、そのうちどれか一つでも手駒として手に入れば、ベリアルは簡単にお払い箱になるだろう。

 しかし、それはサタンの属性として当然の行為である。ベリアルもまた、サンダルフォンが自分の力を必要としている間はその関係を損なうつもりはなかった。

 ただ、サンダルフォンが昔と違い、神との対決に手段を選ばなくなっていることには皮肉なものを感じていた。ベリアルが自らの悪徳の為に悪徳を為すのに対して、サンダルフォンは自分の大義の為に悪徳を為そうとしているからだ。

 いや、むしろその事に関してはサンダルフォンに対して愛情すら感じている。悪徳にしろ、大義にしろ、それはある意味自分の欲望に忠実ということだからだ。

「そうさ、サンダルフォン。お前はサタンさ………」

 そう呟くと、ベリアルは自分の部屋のノブを回した。空間を壁や板で遮蔽する人間特有の概念をサンダルフォンが此処にも持ち込んでいることに気が付き、僅かに笑みを浮かべながら…。

 しかし、部屋に入ったベリアルはサンダルフォンの嗜好も悪くはないと感じた。何故なら、そこには見目麗しい一人の天使が立っていたからである。もし壁という視界を遮るものがなければ、ベリアルはこの驚きを楽しめなかっただろう。

 ベリアルの前に立っていたのは、他ならぬウジアルであった。ラシュミラの力に敗北を喫し、何とか塔に戻ってきたのだ。

 醜悪な悪魔の前に立ち、青ざめてはいるが、その美貌は些かも損なわれてはいない。むしろ、恐怖に彩られたその様子は、その美しさを引き立たせているとさえ言える。

 軽く波打つブルネットは白い肌を際立たせ、褐色の瞳は怯えた色を浮かべながらも、神秘的に輝いている。そして呼吸と共に上下する胸は薄い衣の下で豊かに震えている。

「…………これは何と美しい天使だ」

 ベリアルは感嘆の声を漏らした。しかし、その言葉にウジアルは恐怖し、肩をすくませる。

「ふふふ、僕が怖いか?」

 ベリアルは訊ねた。傍らに置かれた寝台に腰を下ろし、美貌の天使を舐め回すように見つめる。

「何もそんなに怖がらなくてもいい。僕も今やこんな姿となったが、元は君らと同族だ…」

 ベリアルの言葉に、ウジアルは返事をしなかった。苦笑を漏らすベリアル。恐怖という添え物は御馳走を際立たせる物だ。

「……それにしても、可哀想に。グリゴリにやられたと聞いたよ?怪我はなかったかい?僕の可愛い花嫁」

 そう言って、ベリアルはウジアルの背後に立つと、うっとりと顔を寄せてその香りを楽しんだ。

「それにしても、君みたいな可憐な人を戦場に赴かせるとは、サンダルフォンも酷い奴だ。僕なら君を決してそんな目には遭わせないだろうに……」

 その言葉に、ウジアルはようやく反応した。

「元々私が志願したのです。相手は完全に覚醒しているわけではないので、私一人でどうにでもなると思ったのです。それに不覚をとったのは、私の力が及ばなかった為で………」

 ウジアルの言葉に、ベリアルはすっと彼女から離れた。

「覚醒だと?完全な?サンダルフォンは君をそう言って騙したのか?」

 首を傾げるウジアル。

「私を、騙す?」

「だって、そうだろ?君は完全に覚醒したというグリゴリを見たことがあるのかい?機械の神に対抗し得るのは神の子としてのグリゴリだと言われている。それが、天界軍に我らが対抗し得る唯一の手段だとも。でも、そんな保証のない話が信じられるのかい?君は、何故に神がグリゴリを恐れると思うんだ?グリゴリの力が神に通用すると」

 ウジアルは振り返り、ベリアルを伺った。

「しかし、完全に覚醒していないグリゴリでも、かなり強力な力を持ち、現に私は……」

「その力は我々の力を遙かに凌ぐのかい?私の力は君も知っているだろう。サンダルフォンやベルゼブルに劣るものではないよ?」

 その言葉に、ウジアルはふと、ベリアルの戦いぶりを思い出した。天使であった彼は勇猛で、その力は圧倒的であった。何万と押し寄せる天界軍の中に身を投じ、ガルガリンの上でフレイベリウムを振るう熾天使をも引きずり落とした。狂気に歪む凄惨な美しさを見せるベリアルに対し、敵も味方も圧倒された。

「いえ、あなたの力なら或いは………」

 追従の言葉などではなく、ウジアルは本気でそう答えた。実際、自分が敗れたとはいえ、霊的位階の高いサンダルフォンやベリアルなら、簡単に相手を圧倒できただろう。

「それに、サンダルフォンはグリゴリの力をまるで信用していないんだよ。あいつはもう一つの切り札を、確実な切り札を持っている」

「そ、そんな………」

 驚きの目を向けるウジアル。

「信じられないのも無理はないけどね。でも、本当のことだ。君のお仲間の天使に聞いてみるが良い。サンダルフォンはグリゴリの力なんぞ、最初から信じていないんだよ」

 ベリアルの言葉に、ウジアルは言葉を失った。

 そんなウジアルの耳元で、ベリアルは優しく囁きかける。

「大体、先の戦いからサンダルフォンは変わったと思わないかい?目的のためには手段を選ばなくなっている」

「それは、圧倒的な神の力を思い知らされたからであって、勝利の為には非情に徹しなければならない時だって………」

「そうかい?なら、一体、神に対する戦いの意味はなんだい?非情に徹して、仲間を切り捨てて得た勝利にどんな意味がある?勝利の為の戦いを、もっとも嫌っていたのは他ならないサンダルフォンだった筈だ」

「でも、その為に多くの仲間を失いました………」

 一応の抗弁をするものの、ウジアルの言葉に実感は伴ってはいなかった。その上で、ベリアルはなおも熱心に語りかける。

「それで、失いたくない仲間を捨て駒にするようになったのかい?矛盾してやいないかい?大体、君が勝てない戦いに赴いたのだって、グリゴリがどうであれ、サンダルフォンが僕に君をあてがう為じゃないのかい?君がここにいる何よりの理由は、サンダルフォンが次に戦いに僕の力を必要としているからじゃないのかい?君は僕の力を得る為に、餌として放り出されたんだ」

 ベリアルの言葉に、力無くうなだれるウジアル。ベリアルの言葉がどうであれ、悪魔に身を捧げなければないのはサンダルフォンの仕向けたことだ。それだけは厳然とした事実なのだ。

「僕の言葉を信じる信じないは君次第だ。でも、この僕も、サンダルフォンに使い捨てにされようとしている。サンダルフォンはこの僕をも信じてはいないんだよ。ベルゼブルが復活すれば、僕は途端にお払い箱になるだろう」

 目を見開き、遠くを見つめるウジアル。そして茫然自失となったウジアルの身体に、ベリアルは無遠慮に手を伸ばした。

「可愛い僕の花嫁。今は何も考えられないかも知れないが、この僕を慰めてくれ………。なに、サンダルフォンなんかよりも、ずっと可愛がってあげるさ」

 そう言って、三対の腕で可憐な天使を抱きすくめる。

「わ、私は………」

 何も考えられず、ただ立ちつくすウジアル。

「今は何も考えなくて良い。ただ、僕に身を任せてくれればいいのだ」

 一対の腕はその細い腰に回され、一対の腕は豊かな胸に伸ばされ、最後の一対は上から太股の上を這い回る。そしてベリアルはウジアルのなめらかな首筋に舌を這わした。

「僕が嫌いか?おぞましいか?…………ふふふ、答えなくてもいいさ。君のその恐怖と嫌悪に歪んだ顔を見れば分かる…」

 ふくよかな胸に指を食い込ませ、服の上から乳首を弄び、ベリアルは白く美しい顔で囁いた。

「何しろ僕は悪魔だ。神に背信することがこの上ない喜びなのだ。………だが、サンダルフォンとどこが違う?奴は取り澄ました顔で正義や大義を唱え、人々を破滅へと向かわせる。奴は自己矛盾に気が付かないままデネブで大敗を喫した。主立った仲間は様々な方法で幽閉空間へと閉じこめられ、デネブそのものも滅んでしまった………。人々を破滅させて、それの何処が正義だというのだ。我々は堕天使だ。神に謀叛を企てたときから、正義や大義と言ったものから背を向けてしまったしまったのだ。そしてそれはお前も同じだ………」

 ベリアルの言葉に、虚ろな瞳を向けるウジアル。

「……私も、おな…じ?」

 まるで独り言のように呟く天使。 

「そうだ、同じだ。僕がそうであり、サンダルフォンがそうであるように、お前も悪魔なのだ」

 そう言うとベリアルは、ウジアルの顔を支え、その瞳に舌を差し込んだ。惑乱されたまま、悪魔の愛撫を甘受する美天使。やがて、悪魔の手の一対が天使の胸元に伸び、その薄い衣を引き裂いた。

「!!」

 量感のある果実がこぼれだし、ウジアルは息を呑んだ。頬は紅潮し、恥じらいに瞳が滲む。

「お前は悪魔だ。美しい悪魔だ。何故ならお前は、こんなにも僕の心を千々に乱す」

 そう言ってベリアルは白い乳房に指を食い込ませる。

「は、あぁ、そんなに、強くしないでぇ……」

 身を捩って逃れようとするウジアルだったが、ベリアルは残った四本の手で逃さない。その手に吸い付くような感触を楽しみながら、撫で回し、こね回し、柔らかな白乳を慰撫する。

 男の手の中で、刻々と淫靡な変化を遂げる天使の白い乳房。その先にある飾りは刺激と共に赤味を増し、こりこりとしこり立っていく。そして乳輪は張り、乳首は限界まで堅くなっていく。

 やがて。

「はああぁあっ!!」

 ベリアルが乳首の先に触れた途端、甘い痺れが走り、ウジアルの身体がぴりぴりと小刻みに震えた。ベリアルの愛撫に、既にいきり立っていた乳首は殊更過敏になっており、少しの刺激でも激しく感じてしまうのだ。

 くりくりと乳首を転がし、捻り、その淫靡な変形を楽しむベリアル。

「いやぁあ、……お、玩具にし、……あんっ!しないでぇ……」

「………敏感なことは良いことだよ。綺麗な声で鳴いてくれ」

「…………ふ、ぅんぅっ!そ、そんなぁ」

 身を捩って逃れようとするウジアル。しかし、六本の腕は天使を逃さなかった。そして、ベリアルの手はウジアルの下腹部の茂みへと伸ばされた。

「これは随分堅くなっているじゃないか?こんなに張っていては苦しいだろう?」

 そう言って、直立するウジアルの陰茎に指を這わすベリアル。

「だ、だめぇっ!も、洩れちゃうっ!!」

 生白い陰茎に刺激を受け、ウジアルが眉間に皺を寄せる。そんなウジアルの前にベリアルは跪くと、衣の裾を持ち上げ、陰茎を咥え込んだ。

「ひあっ!?」

「ふふふ、折角の樹液を無駄にしてはもったいない。僕が全て絞り出してあげるよ」

 ぐぽ、ぐちゅ、ぐちゅ……ちゅば。

 陰茎を根本まで飲み込み、舌を絡み付かせ、さも旨そうに絞りたてる。

「やぁっ!出ちゃうっ!出ちゃうぅぅうっ!!」

 ぶぴゅる、ぶちゅ、ちゅぴ……。

 ベリアルの口の中に白濁液が吐き出され、ウジアルはそれをさも旨そうに飲み下した。身体の力が抜けたように、ウジアルは放心する。その天使をベリアルは傍らにあったベッドに押し倒した。そうして、投げ出された足を開き、その間に身体を割り込ませる。

「綺麗な花弁だ。それに芳しい香り。目眩がしそうだよ」

 むっちりした太股を左右に押し広げ、じくじくと湿り気を帯びた花弁に手をかけるベリアル。木の葉型に拡げられたピンクの粘膜はぬらぬらと妖しい光沢を放ち、幾重にも折り重なった肉襞の奥からとろりと濃厚な花蜜を溢れ出す。

 唇を寄せ、ウジアルの秘部に顔を埋めると、その甘い汁を貪った。

「ひあぅっ!?」

 腰を浮かし、若鮎のように飛び跳ねるウジアル。樹液を大量に放出し、その身体は非常に敏感になっていた。

「やはぁあっ!!いやぁ………。舌が、ぬるぬる身体の中を舐め回して、ひんぅっ!………はぁあ、変になっちゃうっ!!!」

 がくがくと身体を痙攣させるウジアル。ベリアルはそれにはまるで構わず、嬉々として淫汁をすすった。じゅぶじゅぶと淫らな音を立て、淫液が顎を濡らすのも構わずに舌を伸ばし、膣内を掻き回す。

 顎がおかしくなるまでベリアルは蜜液を堪能し、やがて顔を上げた。ウジアルの淫靡な花はびゅくびゅくと蠢き、淫らな光沢を放ちながら止めどなく液を溢れ出させる。

 その様を、愉悦に歪んだ表情で見下ろすベリアル。

「さあ、次は僕を気持ちよくしてくれないか?そろそろ君も挿れて欲しいだろう?」

 立ち上がるベリアル。ウジアルがその下腹部に目をやると、そこには太い男根が何本も、まるで凶悪な口縄のように青筋を立てて隆起していた。

「そ、そんな………いや、入らない……」

 青ざめ、震えながら首を左右に振るウジアル。そんな初々しい反応を示す天使の姿に、ベリアルの股間はいよいよ硬度を増していく。

「……すぐに、これでないと満足できなくなるさ」

 嗤う悪魔。

 やがて、陰茎の一つがウジアルの柔らかな肉丘にあてがわれる。そこからはみ出す花弁の感触を楽しみながら、むにゅむにゅと淫裂をこすりあげるベリアル。

「ふ、ふぅんぅ………。や、やぁ……」

 頬を羞恥に染め、譫言のように呟くウジアル。豊かな胸の上で、小さな飾りがふるふると慎ましく揺れている。

 ベリアルは腰をゆっくり動かしながら、一対の手を胸に伸ばした。手に余るその軟らかな肉の塊は、指の間からはみ出し、淫靡な変形を見せる。こりこりとしこり立つ乳首の感触を、手の平に感じながら、ベリアルは見事な白乳をこね回した。

 微弱な、それでいて的確な愛撫はウジアルを官能の虜にした。甘い痺れがうずうずと身体の内から広がり、より強い快感を求めてウジアルを突き動かす。

「そろそろ欲しくなってきたんじゃないか?」

 薄い笑みを浮かべて問い掛けるベリアルに、ウジアルは躊躇いながらに首を縦に振る。

 ウジアルの同意を得たベリアルはえらの張った赤黒い肉棒を、艶やかな桃色の割れ目にあてがった。にちゅっと小さな音が洩れ、亀頭の先が可憐な花弁を割り開く。

「おねが……はぁ、……いい。じ、焦らさないでぇ……」

 切なく、甘い声を漏らして懇願するウジアル。やがて、肉棒は天使の体内に飲み込まれていく。

「はぁあん、ぜ、全部入ったぁ……」

 頬を手で覆い、うっとりと呟く白乳天使。

 ウジアルの中は溶けかけたバターのように柔らかく、熱く、それでいて肉棒をきちきちと締め上げてくる。幾重にも折り重なる複雑で淫靡な花弁は、ぬるぬるとぬめる液体を垂らし、陰茎にまとわりついてくる。

 ベリアルは肉棒を引こうとしたが、絡み付く肉襞はぬめりと共に絡み付き、まるで下半身が溶かされそうなくらいに甘い刺激を送り込んでくる。

 快感に腰が抜けそうになり、ベリアルは小さく呻き声を上げる。

 このまま注送を続ければ、すぐに果ててしまうとも思えたが、しかし、その目眩のするような快感はそうした自制を許さなかった。

「だ、駄目だ、止まらないっ!?」

 その言葉と共に、ベリアルの動きが加速した。

「いやっ!あんっぅ!?」

 ベリアルの突然の豹変ぶりに、戸惑いの声を上げるウジアル。しかし、ベリアルは凶暴な欲望を天使のか細い身体にぶつけるように、腰を激しく動かし、乳房に吸い付き、快楽を貪った。

「はぁっ!!はげ、激しすぎるぅぅっ!!」

 悲鳴を上げるウジアル。しかし、ベリアルは狂った獣のように腰を激しく振り立て、小さな花弁を掻き回す。

「あああっ!!だ、駄目ぇっ!!お腹の中が裏返っちゃうっっっ!!!」

 目に涙を滲ませ、泣き叫ぶウジアル。しかし、ベリアルの強烈な攻撃は更に激しさを増した。残った陰茎がウジアルの穴という穴に殺到したのだ。

「あああっ!!そ、そんなぁっ!?は、入らない、は、はあぁぁあんっぅ!!」

 ぎちぎちと膣穴を押し広げ、二本の陰茎が同時に侵入する。そして更に、きつく閉じた菊門にまでそれは侵入を開始した。

「はぁっ!!こ、壊れちゃうよぉおっ!!はあっ、あぐぅっむ!?」

 続いて、まるで触手のように伸びた陰茎は、天使の清浄な口にまで押し入った。三対の腕が細い身体を磔にし、血管の浮いた凶暴な肉棒は穴という穴を思うさま蹂躙する。

 ずるずると肉棒に体内を掻き回され、こすりあげられ、突き上げられ、肉棒を口に咥えたままウジアルはよがり鳴いた。頭の中で何度も絶頂が訪れ、オルガが炸裂する。

 ベリアルも同様に、何度も何度も絶頂を感じていた。精を枯れるまで吐き出した陰茎は出番を待つ次の陰茎に穴を譲り、それは膣の奥深くまで潜り込むと、またも激しく暴れ回る。

 大量の精液がウジアルの膣から溢れ出し、愛液と混じり合って太股を濡らす。じゅぶじゅぶと泡を含み、噴出する愛液、精液。

 どこまでも続く快楽地獄の果てに、ついに二人は同時に気を失ってしまった。

 

 やがて、気を取り戻したウジアルは、自分がベリアルの腹の上に抱かれている事に気が付いた。何本かの陰茎は未だにウジアルの穴にはめられており、複数の手はウジアルの白く細い陰茎と柔らかな乳房を優しく慰撫している。

「あんっ!まだ、続けられるのですか?」

 呆れたともつかぬ調子で天使が微笑みかける。ベリアルはその愛らしい微笑みに苦笑を漏らすと、首を振った。

「なに、余韻に浸っているだけさ………。それとも、君はまだやれるのかい?」

 頬を染め、曖昧に笑みを浮かべるウジアル。

 そんなウジアルの様子に、ベリアルは大袈裟に肩をすくめて見せた。

「やれやれ、敵と戦う前に、僕は花嫁に殺されてしまいそうだ………」

「まあ」

 ベリアルのおどけた様子に、ウジアルの顔はほころび、二人はどちらともなく笑い出した。

 やがて、ひとしきり笑い終えると、ベリアルは真顔に戻った。

「さて、僕はそろそろ戦いの用意を調えなければならない」

「戦いの用意、ですか?」

 思わず復唱するウジアル。

「そうだ。僕は幽閉空間を彷徨う間に、同じく幽閉されたケルビムを見つけた。おそらく、先の戦いで我らに味方した獣達だろう。そのケルビム達の幽閉座標が判明したので、そいつらを呼び出して次の戦闘に備えようと思うんだ」

 ベリアルの言葉に、ウジアルは愁眉を開く。

「黒のケルビム達を呼び出せれば、かなりの戦力増強になります」

「問題がないわけじゃない。連中は幽閉空間に閉じ込められる時に知能を奪われている。そのままだと力はあっても連中を制御できない………」

「何か、何か手段はないんですか?」

 再び不安そうな顔を見せるウジアル。しかし、当のベリアルはさして気にする風でもない。

「なに、知能がなければ新しい脳味噌を付けてやるさ」

 そう言って、薄い笑みを浮かべるベリアル。

「………?」

 首を傾げるウジアル。ベリアルはウジアルをそっと脇へやると、おもむろに立ち上がった。

「さあ、それでは僕はケルビム召還に立ち会ってくるとしよう。花嫁はそこで休んでいるといい。戻ってきたらまた続きをしなければいけないしね」

 そう言うと部屋をあとにするベリアル。

 

 薄暗い部屋の中、魔法陣の中に寝かされる少女。着衣は一切身に着けてはおらず、下半身ではくぐもった音が洩れだしている。少女の頬は紅潮し、時折鼻にかかった甘い吐息が漏れ出す。

 少女の下腹部でくぐもった音を立てているのは人工の男根であった。黒光りする凶悪でグロテスクな張り型は淫靡に蠢き、小さな膣穴を掻き回し、激しい振動を送り込んでいた。

 ぽとぽとと糸を引く粘液が床に恥ずかしい染みを作り出す。

 そのか細い身体から滲み出す性臭が、異空間の魔獣を誘い出すのだ。

 そして、その様子をガラス越しに見ていたテチアルが、やはりその様子を隣で見ていたベリアルに問い掛ける。

「あの少女は第二段階にまで覚醒した貴重な実験材料なんですよ?それを、こんな………」

 その言葉を、ベリアルは一笑に付した。

「だからこそ、この貴重な実験に使用するのさ。知能を奪われたケルビムの身体をコントロール出来るのは、霊的位階の高い存在だけだ。それとも、君が彼女の代わりになるのかい?」

 ベリアルの言葉に思わず言葉を詰まらせるテチアル。しかし、だからといって肯うことは出来ない。

「サンダルフォン様はこの事を御存知なのですか?」

「無論さ。君は黙って事の成り行きを見守っているんだね」

 そう言うと、ベリアルは口をつぐみ、テチアルもそれ以上は何も言わなかった。

 やがて、魔法陣に変化が訪れる。魔法陣に描かれた文様が赤く光り出し、黒い霧が少女の足下から這い上がる。

 尋常ならざる事態に気が付き、思わずその場から逃れようとする少女。しかし、手足は繋がれており、身動きもままならなかった。

 黒い霧は少女の身体を愛撫するように這い回り、わずかにけぶる和毛が揺れる。いつしか人工の男根は床に転がり、代わりに霧が少女の秘裂をさいなんでいた。

「いやぁあっ!!やはぁあっ!?」

 身を捩り逃れようとする少女。悲鳴を上げ、顔を恐怖に引きつらせる。

 やがて、黒い霧は実体を持たないまでも粘液質に変質し、少女の身体を包み込んでいく。

 ぼんやりとした霧の中、少女の膣穴が何か見えないものに押し広げられていく。

「は、入ってくる、入ってくるぅうっ!?」

 実体を持たない黒い霧は、明らかに少女を陵辱していた。目に見えない何かがその滑らかな肌を舐め回し、内蔵の奥までこね回している。

「あんっ!!ああああああっ!!ひあぅっ!?あんぅっ!!」

 玉の汗を滲ませ、頬を紅潮させて少女は身悶えた。

「はぁああっ!!」

 少女を束縛していた鎖が解かれ、弓なりになった少女の身体が宙に浮かぶ。

 ついに、幽閉空間から魔獣が召還されようとしているのだ。少女の絶頂と共に次第にその姿を現す魔獣。

「ふむ、これは計算外だったようだね」

 ガラスの向こう側でベリアルがほくそ笑む。少女の身体を中心にその姿を現した魔獣は肉食の頭部を三つ備えていたのだ。

 魔神コアがその合成獣を支配していく。金属質の回路がその内部に張り巡らされ、少女の意識をも支配していく。

 その肉体の恐るべき変化に戦慄する少女は、絶望と共に小さく喘いだ。

「………助けて、澪」

 一筋の涙と共に呟きを漏らす少女。

 その意識は混濁していき、やがて魔神コアに飲み込まれていった。

 

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