第四話「黒曜石の翼編」

 

 白い合金の道路。その左右を単調な白い建物が建ち並び、何処までも同じ景色が続く。 そこに今、上空の奇岩から無数の異形が降り立った。

 窓の隙間から、外の様子を覗き見る綺沙羅達。化け物達は思い思いの建物の中に姿を消し、やがて、何処からともなく悲鳴が上がった。

「さ、早く窓を閉めて………。あいつらに気付かれたら、私達もただじゃ済まないわ」

 澪の言葉を待たなくても、綺沙羅は窓から離れ、耳を塞いでしゃがみ込んだ。

 建物から逃げ出した少女達が、むくつけき凶暴な怪物に押し倒され、その白い裸身を思う様なぶり物にされているのだ。

 中にはまだ処女の娘もいて、股間を鮮血に染めて泣き叫んでいる。

「……もう、いや、何だって怪物達はこんな事を?」

 綺沙羅の言葉に、澪は窓の方を見つめながら答えた。まるで、外の様子が見えているかのように。

「ああ、セックスがしたいからだろ?」

 あまりにも簡潔明瞭な言葉に、綺沙羅は言葉の接ぎ穂を失った。

 大して興味の引かれる話題でもないのだろう、綺沙羅が何も話さないのを見て、澪はやがて、側にあったベッドにどさりと倒れ込んだ。

 そして、天井の染みを数えながら呟く。

「私が分からないのは、どうしてこんな施設があるのかと言うこと。どうして連中はこんな場所に私達を連れてきたのかと言うこと」

「連れてきた?」

「そう、連れてきた。………私達は何か超常的な力でここに運ばれてきた。それは間違いないわ。そして、そんな事が出来るのは、連中くらいなものね。楽しみの為に此処に連れてこられたのは間違いないけど、わざわざこんな施設まで造った理由が分からないわ」

 その言葉を聞き、綺沙羅は頷いた。確かに、何処か檻みたいな処に最初から入れておけば、逃げられる心配もなく、好きなだけ少女を玩具に出来る。わざわざ逃げられるようにしておいて、食料まで用意しておく、その理由は分からない。

 ふと見ると、冷蔵庫を開けて羅瑠とむつみが食事を始めた。澪も腰下ろし、それに加わる。

「此処に連れて来たのは」綺沙羅が口を開く「此処に連れてきたのは連中とは違う別の存在だったら?」

 その言葉に、澪が食事をしながら振り返る。

「それで、連中のセックスの相手をさせるように、こんな病院みたいな処に放り込んだ訳ね」

「他に目的があるとしたら?あの怪物達の相手をさせることで、何かがあるとか?」

 澪は林檎を一つ、綺沙羅に差し出すが、綺沙羅は首を振って下げさせる。

「ふふふ、その推理はあながち外れじゃないかも知れないわ。その何かには心当たりがあるもの。でも、その先が分からない」

 澪の、何かを知っている風な口振りに、綺沙羅は首を傾げた。

 澪は綺沙羅よりもこの世界のことを知っている。ただ、知っていてそれを仄めかすだけの澪の態度には、些か腹が立ちもした。

「心当たりって、一体?」

 綺沙羅は質した。

「それはそのうち嫌でも分かるわ。でも、今はその事を言うつもりはないわ。って、言うか、言いたくないの………」

「そんな………」

 綺沙羅は困惑した。澪が悪意を持って事態を隠しているのなら、問い詰めようと言う気にもなるが、言いたくないと言われれば、それ以上は聞けなくなる。

 言葉を無くす綺沙羅。綺沙羅の様子には構わず、澪達は食事を続ける。

 綺沙羅は無言で澪達を見ていたが、ふと、自分の手がぬるぬるしていることに気が付いた。よく見ると、床のそこかしこに、粘液状の物が染み出している。

「………なに、これ?」

 綺沙羅は自分の指を確かめた。粘液質の物が指先で糸を引く。

『お嬢さん方、食事はお済みですかな?』

 不意に、何者かの声が木霊する。慌てて立ち上がろうとする、綺沙羅。しかし、足首を誰かに掴まれて、転んでしまう。

 床下から、奇妙な怪物の頭が顔を出し、綺沙羅と視線がぶつかる。それは髑髏(されこうべ)の様であり、また、粘液質の白い皮膜で覆われていた。

「………きゃっ!」

 小さく悲鳴を上げる綺沙羅。その声を聞き、一瞬、髑髏が笑ったようにも見えた。

 その怪物が、落ちくぼんだ眼孔の奥を赤く明滅させ、じっとこちらを見つめる。

『我が名はオールド(古の)ダグ・アオン。これほど上玉が揃っているとは、今日はついている。さあ、我が快楽の虜になりたい者はどの娘だ』

 

 ダグ・アオン、ダゴン。古代ペリシテ人の神。その名はダグ(魚)アオン(偶像)に由来する。古くから世に轟く令名を持つ者の一人。ガザやアシドドの神殿に住まう邪神。

 

 言葉と共に、ダグ・アオンは姿の全容を現した。その姿は白骨と海洋生物を混ぜ合わせたような姿をしていた。肩からは無数の触手を生やし、それぞれに吸盤が付いている。上半身だけ見れば、まるで烏賊のようでもあり、また、手足は鱗で覆われていて魚のようでもある。肋骨の下辺りに赤い亀裂があり、それは鰓なのだろう、呼吸と共に開閉を繰り返していた。

「オールドなんて、大層な事言って、ゴシック・ホラーの読み過ぎなんじゃないの?」

 澪が毒づく。

「あ、あの、あまりそう言うことは言わない方が………」

 綺沙羅が不安そうに呟く。

「ねえ、あのお魚、お刺身に出来るかなぁ??」

 綺沙羅の肩越しに羅瑠が顔を覗かせる。

 あまり緊張感のない状況であったが、ダグ・アオンは意に介さず、肩の触手を伸ばして、まず、澪を絡め取った。

「うわっ!!ちょっ!?放してよ、この蛸っ!!」

 足首を絡め取られ、吊り上げられる澪。

 シーツを裂いて作った簡素な服は簡単に剥がれ落ち、触手が四肢を絡め取る。

「やめろ、この変態!私はちんちんぶら下げた生き物が大嫌いなんだっ!!」

 藻掻く澪。

『ふふふ、いつまでそんな事を言っていられるかな?』

 そう言うと、ダグ・アオンは粘液にぬめる触手を、少女の身体に這わしていった。

「………あぅっ!」

 小さく悲鳴を上げる澪。生暖かい触手が吸盤を収縮させながら、足下から這い上がり、股の付け根を滑りながら腰骨に向かって絡み付く。巻き付いた触手はそのまま澪の足を広げ、その秘部を大きく露出させる。

「………み、見ないでぇ………」

 嫌悪と共に眉間に皺を寄せ、身を捩って逃れようとする澪。ふっくらと膨らんだ土手や赤い亀裂、僅かにはみ出した花弁、そして、その上を楚々と彩る僅かな恥毛。それらが呼吸と共に羞恥に震える。

『ふむ、なかなかに良い色をしている』

 そう言うとダグ・アオンは、触手の一本を秘裂に這わせた。

「ひあっ!!さ、触らないでぇ………」

 澪は懇願するが、ダグ・アオンは構わずにもう一本の触手を伸ばし、肉色の粘膜を押し広げてしまう。

 にちゅっという猥褻な音と共に、秘腔が露わになる。幾重にも重なり合う肉襞の奥に、そのホールは涎を垂らしてぴくぴくと蠢いていた。

「ああぁ、見ないでぇ………」

 羞恥に頬を染める澪。しかし、完全に露出した秘部を触手が這い上がり、谷底からそのいぼが粘液と共に舐めあげる。

「んんぅっ!?」

 ゾクゾクと快感が這い上がり、唇を噛み締める澪。

『どれ、味見といこうか……』

 そう言うと、ダグ・アオンは、澪を宙吊りにしたまま顔に寄せ、股の間に顔を潜り込ませた。

 軟体動物のような太くて長い舌が、ぬるぬると谷底を這い回る。

 じゅちゅる、くちゅ、くちゅ………。

「いやあぁ、き、汚い………」

 嫌悪で顔を歪める澪。しかし、その感情とは裏腹に、舌は確実に澪の性感を刺激していく。いや、嫌悪感が快感を助長していくのかも知れない。

『あふぅ、………このぬめり、どうやら私の唾液だけではなさそうだな』

 いぼは更に澪の身体を舐め回し、小振りだが形の良い乳房を捻りあげ、乳首の先をこりこりと撫で回す。

「や、やめぇ、あん、ああああんぅっ!?」

 甘い吐息を漏らし、嬌声を漏らす澪。

 ダグ・アオンは愉悦に顔を歪ませ、その様を楽しんだ。

 その陰茎は既に反り返っていたが、それは更に長さを伸ばしていく。陰茎の根本がまるで女陰のようになっており、その穴から際限なく肉茎が伸びてくるのだ。

 やがて、大きく膨らんだ亀頭は澪自身に迫り、触手によって木の葉形に開かれた陰唇、その中心にあてがわれる。

「いや、それだけは……あんぅ!?」

 次の瞬間、亀頭がのるりと潜り込む。

『嫌と言う割には、ずいぶん締め付けてくる』

 邪神はそう言って下卑た笑いを漏らした。

 くねくねと腰をよじり、藻掻く澪。触手は尚も少女の全身を舐め回し、いたぶり、翻弄する。

 澪の花心からは涎が溢れ、流れ落ち、床に大きな水たまりを作るほどであった。

 ぐちゅぐちゅと猥褻な音が響き、陰茎は注送を繰り返す。その度にめくれ上がり、巻き込まれ、捩れる花弁。

『どうした?これでもまだちんちんは嫌いだというのか?』

「んんぅううっ!!」

 質す邪神。しかし、澪は顔を歪め、首を振るばかり。もう既に、ダグ・アオンの言葉など、耳に届いてはいないのだ。

『どうやら一本では物足りないらしいな。とんだ淫乱娘だ……』

 そう呟きを漏らすと、ダグ・アオンは更に触手を殺到させた。

「ひんぁっ!!」

 仰け反る澪。

 触手は更に澪の全身を埋め尽くし、攻撃は菊門にまで及んだのだ。

 左右から押し広げるように、二本の触手が潜り込む。いぼの一つ一つが括約筋を弾く度、電流が背筋を這い上がり、脳で炸裂する。

「ひむぁっ!!あん、あんぅっ!?ああああぁぁぁあっ!!!」

 淫水を吹き出させ、白目をむき、澪は激しい痙攣を起こした。

 しかし、その様子が、ただの絶頂による物でないことは一目で分かった。

「私は、………あんっ!!お、お姉ちゃん!!あ、あがっ、あああぁぁあっ!!」

 譫言のように呟く澪。その尋常ではない様子に綺沙羅は不安に駆られた。

 そして次の瞬間、澪の身体がさらなる変異を見せた。

「ソウル・フィードバック。戦う意志が、己が肉体を戦闘兵器に変える………」

 不意に、綺沙羅の耳に何者かの声が届く。

 しかし、羅瑠はそんな言葉を口にしそうにはなく、むつみは口が聞けない。ダグ・アオンと澪は論外である。怪訝な表情を見せる綺沙羅だったが、そんな疑問は、澪の身体の異変にかき消された。

「ぐぅう、あぐぅあ……」

 苦悶の声をあげる澪。瞳は赤く充血し、皮膚の表面には黒い結晶が浮き出ている。

『こ、こいつはまさか………』

 驚き、呟きを漏らすダグ・アオン。

 その間にも、澪の身体は刻々と変化し、黒い結晶はやがて、澪の全身を覆い隠した。

「ぐあああああああぁぁぁぁあっ!!」

 悲鳴とも、方向ともつかぬ声を上げ、澪は身体に絡まった触手を引きちぎった。

 四散する触手、その血溜まりの中に立っているのは、もはや澪ではなかった。黒い結晶に包まれた怪物。いや、その姿はまるで鎧をまとった中世の騎士のようでもあった。

 アストラルレベルが上昇し、神気を纏う澪。霊光が全身を包み込み、龍鱗を神秘的に輝かせる。

 その異様でありながら、霊気漂う姿に、綺沙羅は驚きの目を向けた。

『おのれぇええっ!グリゴリめぇっ!よくも私の大事な触手をぉおっ!』

 怒声と共に、澪につかみかかるダグ・アオン。澪は簡単にひき倒されるが、何の痛手も感じさせず、むくりと起きあがった。

「がぁああっ!!」

 澪は獅子吼の如き咆吼を上げた。すると、肩胛骨の間から翼が飛び出した。黒い結晶で覆われた翼は、その衝撃で窓を吹き飛ばし、澪はその勢いに乗ってダグ・アオンにつかみかかった。

 壁をぶち破り、廊下に飛び出す澪と魔神。綺沙羅は他の怪物が現れはしないかと不安に駆られたが、幸いにしてそうした最悪の事態にはならなかった。

 怪物達は自分達の行為に忙しく、また、勢い余った怪物が、騒ぎを起こすことなどは珍しくもなかったからである。

『ふん、グリゴリとしての覚醒を見せたとは言え、所詮第一段階の変身。いかほどの物だと言うのかっ!!』

 ダグ・アオンはそう嘯くと、澪の手首を掴んだ。普通なら、華奢な少女の手首など一捻りなのだろうが、黒い龍鱗に覆われたそれは太さを増し、逆にダグ・アオンの腕を押し広げていった。己の過信に気付き、僅かに狼狽を見せ始めるダグ・アオン。

『ぬ、ぬう、これがグリゴリの力だというのか?だが、我等サタンは不死身。如何に貴様が強力な力を持っていようと、無限の再生力を誇るこの私を葬る事は出来んぞ』

 その言葉通り、ダグ・アオンの触手は復活し始めていた。そして、今度はその先から、緑色の粘液を吐き出す。

 じゅっと言う音と共に、澪の装甲が煙を上げる。粘液は強力な酸であった。

『お前をこのまま、腐った泥水に変えてやる』

 そう言って、尚も溶解液を吐き出す邪神。

 しかし、澪はぐっと唇を噛み締めると、ダグ・アオンの手を更に捻りあげた。

『ぐわああああああっ!!』

 悲鳴を上げるダグ・アオン。ぼきぼきと骨の砕ける嫌な音がして、筋肉繊維がぶちぶちと音を立てて弾け、ちぎれる。

 やがて、あらぬ方向にねじ曲がったその腕を、澪は無造作に引き抜き、ぞんざいに放り出した。

 どさりと落ちた腕は、まだ生命の余韻を残し、びちびちと跳ね回る。

 しかし、ダグ・アオンの再生の能力もまた驚異的で、傷口がぎちりと癒着し始めると、新たな腕が生え始める。

『ふん、私は不死身だと言ったろう?』

 嘲笑うダグ・アオン。

 綺沙羅は驚き、絶望と共に呟いた。

「そんな………。あんなんじゃ、いくらやってもきりがない」

 しかし、綺沙羅の動揺を余所に、澪は、喉の奥から人の言葉を絞り出すように呟いた。

「ゲ、外道照身霊波光線………」

 言葉と共に、澪の額が割れ、第三の目が現れる。そして、第三の目は淡い光を照射し、邪神の身体を透過した。

『な、何を…………』

 狼狽えるダグ・アオン。

 霊的な光に照らし出され、血管が網の目のように広がるのが見えた。そしてそれは、ある一点に集約する。

 サタン達の依り代、マシン・コアである。

「ぐあああああああぁぁぁああっ!!」

 澪は叫び声と共に手刀を繰り出し、邪神の胸に深々と突き立てると、そのまま、コアを掴みだした。

『………ば、莫迦な、これがグリゴリの力だというのか?』

 断末魔の声と共に、ダグ・アオンの身体は霧散を始める。コアが破壊され、身体を現世に維持出来なくなったのだ。

 乾いた風と共に、風化した邪神の身体は音もなく消えゆく。

 ダグ・アオンが消滅した後には、破壊されたマシン・コアだけが残っていた。そして、その傍らに立ちつくす黒い翼の天使。

 綺沙羅は変身した澪に声が掛けられなかった。どう反応してよいのか分からないのだ。

 ふと、綺沙羅の脳裏に、澪の言った言葉がよぎる。澪の言う、此処に連れてこられた理由とは言うのはこれの事かも知れない。

「………むつみ」

 綺沙羅の感慨を破るように、澪が口を開く。いつの間にか澪の身体からは鱗が消え、その姿は人間の少女に戻っていた。そして、憮然とした表情でむつみを呼ぶと、腕を掴んで歩き出す。

 強引に引き寄せられ、むつみの顔が苦痛に歪む。初めて見る澪のその様子に、綺沙羅は僅かに驚いた。澪は綺沙羅やむつみ達を肉奴隷と呼びながら、理不尽な扱いをしたことがなかったからである。

「あ、あの………」

 躊躇いがちに声を掛ける綺沙羅。しかし、澪は振り返りもせずに傲然とその言葉を遮った。

「ついて来ないでっ!」

 澪の勢いに気圧され、綺沙羅は思わず身を縮ませる。

「今日はもう、連中は来ないと思うけど、用心に越したことはないわ。この真上の部屋に移動するからあなた達は先に行ってなさい」

 返事が出来ないでいる綺沙羅に冷たい視線を向けると、澪はそのまま部屋を出ていった。

 呆然と見送る綺沙羅。

 そこに、羅瑠がニャゴニャゴとじゃれついてきた。

「うにゃ〜ん、澪は変身すると、いつも怒りっぽくなるんだよ。そいでもって、むっちゃんを連れていくの………」

 羅瑠の言葉に、綺沙羅は首を捻る。

「どこへ?」

「うん、いつもすぐ近くの部屋に行くんだよ」

 意外にあっさりと答える羅瑠。

「行くんだよって、ついて行ったことがあるの?」

「そうだよ、綺沙羅がいなかった時は、僕が一人で留守番になっちゃうんだもん」

「はあ、そりゃあ、まあ、そうだけど。ついて行っちゃいけないんでしょ?」

「うん、だから、僕がついて行っちゃったことは内緒なの」

「………な、内緒って」

 羅瑠の無邪気な様子に、綺沙羅は呆れた声を出す。

「だって、だって、綺沙羅は澪が何処に行くのか知りたくないの?」

 綺沙羅の顔を覗き込む羅瑠。綺沙羅は思わず視線を逸らしてしまう。

「知りたいんでしょ?知りたいんでしょ?綺沙羅もやっぱり知りたいんでしょ?」

「そりゃあ、まあ、知りたくないと言えば嘘になるけど……。でも、すぐ近くに行くんでしょ?何でわざわざそんな………」

 綺沙羅の言葉に、羅瑠は満面の笑みを浮かべる。

「セックスするんだよ」

 

 数刻後、綺沙羅と羅瑠は澪の指定した部屋にいた。

 勿論、澪の言いつけを守って直接来たわけではない。二人は澪とむつみのいる部屋を覗きに行ったのだ。

 そこで綺沙羅の見た物は、むつみを虐げる澪と、懸命に奉仕するむつみの姿であった。

 大股開きでベッドに横になる澪と、後ろ手に縛られ、その股間に潜り込むむつみ。

 まるで芋虫のように蠢きながら、舌を伸ばし、むつみは澪に懸命に奉仕していた。

 綺沙羅の方からは、むつみのお尻しか見えなかった。円い双丘の中心にぷっくりと膨らんだ秘部。僅かにはみ出した花弁は、むつみが体を動かす度にいやらしく捩れた。

 そして、一筋伝う花蜜。

 むつみは奉仕させられながら、感じているのだ。

 冷酷な目で、むつみを見下ろす澪。まるで、汚された身体を浄化させるように、丹念に全身を舐めさせる。首筋、脇の下、乳房、小さな舌が澪の身体を這い回り、やがて縦長の臍、叢、陰部へと進む。

「あっ!」

 歓喜の悲鳴を上げる澪。

 ちゅぶちゅぶと、まるで猫がミルクを舐めるように、そんな猥褻な音が狭い部屋の中で響き渡る。

「もう良いわ。こっちにいらっしゃい、むつみ」

 暫くの間、うっとりと目を細ませて、むつみの奉仕を楽しんでいたが、やがてむつみを引き寄せると、その唇を奪った。

 糸を引く舌と舌。半開きになったむつみの口から舌を吸い出すと、澪は唾液をそこに垂らした。

 むつみはうっとりとそれを飲み下す。

 澪はその様子を見て満足げな表情を見せると、自分の愛液でべとべとになったむつみの口の回りを舐め始めた。今度は澪が、むつみの顔を清めていくのだ。

「あんぅう………」

 身体を拘束されたままのむつみは、まるで木偶人形のように澪に身体を預ける。

 澪は、まだ膨らむ兆しを見せたくらいのささやかな胸に舌を這わし、乳首に吸い付いた。

「はぁぅ……」

 うっとりと溜め息を漏らすむつみ。

 やがて、二人の少女は互いの足を絡ませ合った。

 くちゅくちゅと花弁が捩れ、淫核が擦れ合う。

 二人は汗に粘つく身体を絡ませ合い、互いを貪った。その様子を、身を固くして覗き見る綺沙羅。

 嫌悪感を感じずにいられないが、目は吸い付いたようなその光景から離れようとはしなかった。

 これまでも、澪はむつみに心の安息を求めたのだろう。それは、物言わぬ少女にしかできないことだったのかも知れない。

 怪物に変化してしまう澪が、不安に嘖まれていることは明白である。そして、むつみもその事に同情して、澪の言うがままに奉仕しているのだ。

 その様子を見ながら、綺沙羅は複雑な心境であった。この怪物達の跋扈する地底世界で、

互いを求め合う事の出来る二人。その絆に、綺沙羅はある種の羨望と嫉妬を感じ、そして、同時に嫌悪も感じていた。

 やがて、身体を痙攣させ、絶頂を迎える澪とむつみ。

 綺沙羅はその場をこっそりと離れた。胸がじくじくと痛むようであった。

 その後、程なくして澪は部屋に戻ってきたが、むつみはもとより、綺沙羅や澪、羅瑠でさえ、誰も口を開かなかった。

 時間の流れさえ定かではない地下都市。羅瑠が大きな欠伸をして、ごろりと横になる。むつみもそれに続き、綺沙羅も段々と眠気を催してくる。

 やがて、少女達は、微睡みの中へと意識を沈めていった。

 

 

 

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