第一話「少女と淫獣編」

 

 簡素なベッドの中で、少女は微睡み(まどろみ)の中にいた。

 ブラインドがかさりと鳴り、柔らかな風が少女の頬を撫でる。

 少女の名前は大徳寺綺沙羅。彼女の最後の記憶では確か中学一年生を生業(なりわい)としていた筈である。

 筈というのは、綺沙羅の頭の中がまだはっきりしないからである。ただ分かる事は、此処が自分のベッドの中ではないと言うだけ。

 薄く目を開けると、白い天井が目に入る。真ん中にはひび割れたルームライト。少女は眉根を寄せて寝返りを打つと、辺りを見回した。

 部屋は概ね白で統一されていた。薄汚れた白。黄ばんだ白。くすんだ白。白と言っても清潔な純白のイメージからは程遠く、ひなびた、薄汚れた感じがする。

 綺沙羅はふと、自分が入院したのではないかと思った。記憶の糸を手繰り、一番最後の記憶を呼び覚まそうとする。

「くうっ!?」

 突然、綺沙羅はこめかみを押さえて小さく呻いた。

 脳裏に現れたのは寸断された記憶。破壊の記憶。炎の記憶。

 逃げ惑う人々。立ち上る炎。煙。

 赤熱の地獄。頬を焼く火の粉。

 甦る記憶の中、立ちつくす綺沙羅。

 一体、何が起こったのだろう?

 綺沙羅は記憶を更に遡ろうとした。

 街が炎に包まれる前、………その前。

 ………雲が、そう、雲が割れた。

 抜けるような青空。摩天閣を見上げる少女、綺沙羅。

 青と白。

 絶妙のコントラストを見せる蒼穹。

 そこへ、突如として雲が輪の様に広がり、光球が飛来した。

 街は一瞬の内に火の海となった。

 そして、その中心にいるのは巨大な天使。

 天使のような生き物。

 白く、輝く身体を持ち、複数枚の白い翼。しかし、頭部は人のそれではなく、鳥の様な、猿の様な奇妙な顔をした生き物。

 悪夢?

 現実に起こり得る筈のない、奇妙な光景。

 なら、この場所は?

 綺沙羅は慌てて半身を起こした。窓の向こうには、白いコンクリートの建物があり、見える限りは同じような建物が連なっている。

 そして、その遙か向こうには、空気に霞む巨大な塔。

 唯一、それだけが、見える景色の中で異彩を放っていた。

 塔はやはり白い簡素な造りではあったが、その尖塔の先には白銀に輝く光球が光り輝き、辺りをぼんやりと照らし出している。

 太陽が見あたらないのに、辺りが明るいのはこの光球のお陰なのだ。

 綺沙羅は何故か、この塔の存在が気に掛かった。

 綺沙羅は外に出て見ようと、ベッドから足を下ろそうとしたが、足首に鋭い痛みが走り身体に掛かっていたシーツを取り払った。

 見ると、右足首が鎖に繋がれており、擦れて肌が破れ、血が滲み出ていた。

 今、初めて自分の姿に気が付く綺沙羅。白く簡素な、貫頭衣にも似た服を身に纏い、下着は着けてはいなかった。

 そして、左肩には身に覚えのない入れ墨があった。アルファベットとアラビア数字でNO.06と彫られている。

 誰がこんな酷いことを………?

 綺沙羅は困惑と怒りで目眩がした。喉の奥から熱い怒りがこみ上げ、舌の奥が膨れるような錯覚を覚える。

 そして、ぽろぽろと涙がこぼれ始めた。

「酷い、何なの?これ。………お母さん、お父さん………助けて」

 シーツを掻き寄せ、顔を埋める綺沙羅。嗚咽を漏らし、小刻みに肩を震わせる。

 両親や友人達のことが思い出され、涙が止めどなく溢れ出る。

 綺沙羅はしばし、涙が溢れるに任せた。

 しかし、やがて、落ち着きを取り戻し始めると、不安が胸に押し寄せてくる。

 自分は誰かしらに拉致された。もし、自分を此処に監禁した人間が戻ってきたなら、自分はどうなるのだろう。

「何とかしなくちゃ……、なんとか」

 綺沙羅は呪文のように口の中で唱え始めた。自分に言い聞かせ続けないと、不安で押し潰されそうになる。

 幸いにして、ベッドと足首を繋ぐ鎖は、ベッドの横に立てるくらいの長さが何とかあった。

 綺沙羅は足首が痛むのを堪え、ベッドの横に立つと、部屋の中に何か役に立つものがないか見回した。

 部屋にあるのはベッド、水の枯れた花瓶、それが置かれた棚台、そして小さな流し台、冷蔵庫。

 綺沙羅は流し台が目に留まると、飢えと乾きを思い出し、ベッドを少しずつずらしながら、その小さな流しに向かった。

 ほんの数メートルの距離だったが、流し台に辿り着くのには時間が掛かった。しかし、ようやくのことで流し台に辿り着くと、綺沙羅は祈る想いで蛇口に手をかけた。

「お願い、お水出て!!」

 きゅっと言う音と共に、蛇口から水が溢れ出す。

 綺沙羅は無我夢中で水を流し込んだ。空の胃の腑に冷たい水が満たされていく。

 やがて、水をたらふく飲んだ綺沙羅は、冷蔵庫に目をやった。

 耳を澄ませていると、小さな低い音でそれは唸り、冷蔵庫が生きていることを示している。

 綺沙羅はごくりと唾を飲み下すと、今度は冷蔵庫に向かった。冷蔵庫は流しの隣にあり、ベッドは僅かに動かすだけで済んだ。

 恐る恐る、綺沙羅は冷蔵庫の取っ手に手を伸ばし、勢いよく扉を開いた。

「…………やたっ!!」

 綺沙羅は小さく歓喜の声を漏らした。冷蔵庫の中から光が溢れ、中にはたっぷりと食料が詰まっていた。

 しかし、綺沙羅はすぐには手を伸ばさなかった。水を飲んで飢えが多少癒されていることもあり、慎重になっていた。

 もし、蛇口をひねる前にこの冷蔵庫を開けていたら、綺沙羅は迷わず目の前にあるソーセージやハムにかぶりついていただろう。しかし、この食べ物が安全かどうか分からない。綺沙羅は誘惑を振り払うかのように、目をつぶり、扉を閉めた。

 自分は何も見ていない。この中には何も無い。

 綺沙羅はそのままベッドに倒れ込むと、大きく息を吸った。

「……………………」

 綺沙羅は目を閉じて、これからの事を考えようとした。

「何とか、何とかこの鎖を外さなきゃ………でも」

 綺沙羅は改めて室内を見回した。しかし、これと言って役に立ちそうなものは見あたらない。

 それでも、何とかしなくてはならない。何か逃げ出す方法を考えなくてはならない。

 しかし、そうやって頭をひねればひねるほど、先程見た冷蔵庫の中が頭に思い浮かぶ。頭から追い出そうとすればするほど、誘惑は増していく。

「……………………………」

 気が付いたときには、綺沙羅は一本のソーセージを手にしていた。

「私を殺すつもりなら、こんなところに閉じこめておく必要ないものね………」

 一口食べれば、あとは堰を切ったように口に詰め込む。ソーセージ、チーズ、果物。

 十分に腹が満たされると、綺沙羅はもはや自分を監禁した人間のことなどどうでもよくなっていた。

 満腹感と共に、睡魔が綺沙羅を襲う。

 やがて、綺沙羅は再び眠りについた。

 

 どれほど眠っていただろう?

 もはや時間の感覚が無くなっていた。

 闇が訪れるわけでもなく、光が溢れ返るわけでもなし、白夜とはこういったものなのだろうか。

 その時、綺沙羅は夢と現実の境界の中で、奇妙な音を聞いた。

 低い唸り声、何かの機械音。

 何かの工場が動き出したのだろうか、綺沙羅は最初に見た外の景色を思い出したが、どの建物も同じような感じで、工場のようなものは見あたらなかった。

 もしかすると、窓からは見えないところにあるのかも知れない。

 綺沙羅は漠然とそんなことを考えていた。

 しかし、次の瞬間、大きな物音が綺沙羅を驚かした。

 ドスン。

 物音は扉の方からした。

 綺沙羅は心臓が飛び出しそうになり、そして次には血の色を失った。

 ドスン。

 恐らく、綺沙羅を此処に連れてきた人間だろう。でも、どうして扉を開けないのだろうか?

 ドスン。

 綺沙羅を驚かそうとしているのだろうか。でも、何の為に………。

 犯人が鍵を中に忘れてきたのだとしたら、こんな間抜けな話はない。

 ともあれ、綺沙羅は何とか隠れるなりできないかと狼狽えたが、そうこうしている内に扉は派手な音を立て、内側に倒れ込んだ。

 ベッドの上で身を縮ませ、何とか後じさろうとする綺沙羅。

 黒い影が倒れた扉の上で身をもたげ、ゆっくりと起きあがる。

「……………!?」

 影の主が窓からの光で正身(むざね)を晒した瞬間、綺沙羅はこれまで以上の恐怖に、顔を引きつらせた。

 扉を破って押し入ってきた者、それは人間ではなかったのだ。

 それは乳白色の、まるで巨大な虫のようであり、また人のようでもあり、半透明の身体には旋毛の生えた節足が何本か生えていた。それでいて生き物であるのかと言えばそうとも言えず、金属質の部品が各所に埋め込まれていて、鈍い光沢を放っている。

 更に不気味なことに、それは青白い人の顔を有していた。

 節の入った腹部を呼吸と共に収縮させ、その青白い顔は耳障りな声で呟いた。

「…………お、おんなぁ」

 綺沙羅は息を詰めて怪物を見つめた。

 怪物は盲目なのか、濁った眼球をぎょろぎょろと動かし、顎の先にある触覚のような物を小刻みに震わしている。

「お、おんなのにおいがする………」

 怪物はゆっくりと、しかし、確実に綺沙羅の元へと近づいていった。

「………ひっ!!」

 怪物の前足が綺沙羅の足に触れ、綺沙羅は思わず声を漏らしてしまった。綺沙羅は気が付かないよう祈ったが、怪物はぴくりと反応し、綺沙羅の足を這い回る。

「おんなだ、……お、おんな」

 涎をだらしなく垂らしながら、怪物は綺沙羅の足下に顔を近づけ、くんくんと鼻を鳴らす。

 綺沙羅は嫌悪に鳥肌を立てながらも、口を押さえて声が漏れないように我慢した。

 しかし、がさがさと節足を蠢かせ、怪物がねっとりとした唇を綺沙羅のふくらはぎに寄せた瞬間、耐えかねた綺沙羅の口から悲鳴が漏れた。

「きゃっ!」

 その小さな悲鳴に、怪物は顔を愉悦に歪ませた。

「…………や、やわらけぇ」

 ぬるぬると口から粘液を垂らしながら、怪物は綺沙羅の足を舐め回した。そして、ゆっくりと這い上がってくる。怪物の目的は明らかであった。

「(お願いっ!もうやめてぇえ!!)」

 嫌悪に顔を背けながら、綺沙羅は心の中で悲鳴を上げた。

 やがて、柔らかな太股を舌先で舐め上がると、怪物は目的の場所に辿り着いた。

「はぁ、はぁふぅ、………いいにおいだぁあ、お、おんなのあまいにおいだあ」

 白濁した目をぎょろぎょろと蠢かせ、怪物はくんくんと鼻を鳴らす。綺沙羅は大事な部分を庇おうと、太股にきゅっと力を込めた。

 しかし、怪物はそんなことには構わず、赤黒い舌を伸ばすと、恥丘をべろりと舐め上げた。

 綺沙羅の身体は敏感に反応し、ぴくりと跳ね上がる。

 怪物は淡くけぶる和毛を舌の平でこね回し、淫裂に舌をこじ入れようとするが、綺沙羅は太股を閉じて進入を拒んだ。

 それでも、怪物は舌先を細め、谷底目掛けてぐぬぐぬと押し込んでくる。

「いやあっ!!も、もういやぁあっ!!」

 ついに耐えきれず、綺沙羅は悲鳴を上げ、怪物の顔を押しやろうとした。

 しかし、怪物は逆に太股を掴み、ついには綺沙羅の足を完全に広げてしまった。

 縦一筋の割れ目が完全に白日の下に晒される。僅かにはみ出た花弁が、羞恥にぴくぴくと反応する。

「やああぁあっ!いやはぁああ………」

 綺沙羅は絶望の声を上げた。怪物の目が盲目であろう事は、僅かながらも綺沙羅にとって幸いだったのかも知れない。

 もっとも、綺沙羅にとってはあられもない恥ずかしい姿勢をとらされた事でそんな些細な事は慰めにはならなかった。

 しかも、これからどんな辱めが待っているのか知れないのである。

 粘液にまみれた舌がべちょりと少女の秘部を覆う。巧みに舌を蠢かせ、ぐちゅぐちゅと泡を立ててこね回す。

「いやっ!そ、そんなとこ、はあんっ!!」

 切なげに、かぶりを振る綺沙羅。

 しかし、心は拒んでいても女の性は敏感に反応し、甘い蜜液を垂れ流す。

「はぶぅむ、うめぇ………んぐ、んぐ」

 鼻を恥毛に埋め、淫核を擦りながら、怪物は綺沙羅を貪った。後から後から溢れ出す愛液に酔いしれ、聞きとして喉を鳴らす。

「………いや、………いやぁ、…………やめぇ」

 まるで熱に浮かされたように頬を火照らせ、身体を捩る綺沙羅。もはや少女は、甘い快感に浸食され、抵抗することを忘れていた。

 足を投げ出し、怪物に身を任せる十三歳の少女。せわしなく呼吸しながら、時折鼻に掛かった甘い声を漏らす。

 そしてついに怪物は蜜液に飽いたのか、身体を乗り出し、綺沙羅の身体の上に覆い被さった。

 事此処に至り、綺沙羅は我に返った。腰の下からは赤黒い醜悪な物がせり出しており、鈴口からは涎を垂らし、隆起している。

「いやあああっ!それだけはダメぇえっ!!」

 必死に怪物を押しやろうとする綺沙羅。しかし、この人外の魔物にそんな抵抗が通じる筈もなく、のっぺりとした頭が淫唇を掻き分ける。

「いやぁあああっ!おねがいっ!だめ、だめぇえっ!!」

 それでも何でも、必死に抵抗する綺沙羅。

 怪物はそんな綺沙羅の唇を、その生臭い口で塞いだ。

「んむぅ!?」

 綺沙羅の双眸から熱い涙が溢れた。

「(…………ファースト・キスだったのに)」

 綺沙羅が思い描いていたキスは、これほど醜悪なものではなかった。もっと心ときめくものの筈であった。

 しかし、怪物はそんな綺沙羅の感慨などお構いなしに、ついにその剛直をねじ込んだ。「いやああああああああっ!!」

 怪物の口から逃れ、悲鳴を上げる綺沙羅。赤い鮮血が、破瓜の血が太股を伝い、薄汚れた白いシーツに滲み、赤い花を咲かせる。

「いやはぁっ!!痛いぃいいっ!!やあっ、だめぇっ!!」

 怪物から逃れようと、綺沙羅は必死で暴れた。しかし、少女に怪物を押しのけるだけの力はなく、赤黒い肉の塊は、綺沙羅の体内奥深くにまで収まっていた。

「おおおう、きもちいい………」

 怪物は恍惚とした表情で、腰を揺すり始める。

 生暖かい血と、愛液が混じり合い、柔らかな淫唇がねっとりと絡み付いてくる。きゅうきゅうと締め付けてくる処女の体内に酔いしれ、怪物は更に腰を振り立てる。

「い、痛いっ………、お、おねが……動かないで」

 眉根を寄せ、陵辱に耐える綺沙羅。しかし、怪物は涎を垂らしながら、綺沙羅の口と言わず、鼻と言わずべろべろと舐め回し、中学生にしては発育の良い、柔らかな白乳に唇を寄せる。

 さらさらとして、それでいてしっとり吸い付くような肌理の細やかな肌。柔らかな乳房の中に、こりこりと乳首がしこり立ち、怪物はそれを頬張ると、赤ん坊のように吸い付いた。

「いやあぁ、もう………あんぅっ!!」

 至福の時を味わう怪物に対し、綺沙羅は地獄の苦しみに耐えていた。

 あそこに怪物の野太い剛直をねじ込まれ、それが動く度に身体が二つに裂けそうになる。 しかも、怪物の動きはどんどんと激しさを増していく。

 そしてついに、怪物は絶頂の波に飲み込まれようとしていた。

 陰茎の根本が大きく膨らむ。

「うおあおおお、もう、いきそうだ………」

 怪物が耳障りな声で呻いた。

「だ、だめぇえええっ、中に出しちゃぁっ!赤ちゃんが出来ちゃうっ!!」

 綺沙羅は妊娠という最後にして最悪の事態に戦き、身を捩って逃れようとした。

 しかし、綺沙羅が身体を捻った途端、熱い精が少女の体内奥深くに吐き出された。

 ぶびゅる、びゅると精液が収まりきらずに外に漏れ出す。

「いやぁあ………」

 絶望に打ちひしがれる綺沙羅。

 そして綺沙羅は、そのまま意識を失った。

 薄れゆく意識の中で、綺沙羅は小さく呟く。

「…………お母さん」

 

 翌日と言っても良いのだろうか、綺沙羅が意識を取り戻した時、怪物の姿は既になかった。

 しかし、陰部の鈍痛は、あれが夢ではなかったことを物語っている。

 半身を起こす綺沙羅。昨日の名残がどろりと溢れ出し、シーツを汚す。

 こぼれ出た体液を指先で触れると、綺沙羅はまた涙ぐんだ。

 のろのろと立ち上がり、シーツを掴んで流しに浸けると、水で濡らし、股間を拭う。

「どうして、こんな………」

 ぽろぽろとこぼれ出る涙を何度も何度も拭き取りながら、綺沙羅は股間を清めていく。

 そうして、ばしゃばしゃと顔を洗うと、冷蔵庫を開けて無造作に食べ物を手に取った。

 もはや涙は出てこなかった。頬が乾いた涙で強張るが、気にせず手にしたチーズを頬張り、傍らにあった牛乳で流し込む。

 食事をしながら、ふと、綺沙羅はまたあのくぐもった機械音を耳にした。外の事が気に掛かったが、今更ベッドを引きずって元の場所に移動する気力はない。

 空腹が満たされた綺沙羅は、ベッドの上に仰向けになり、天井をぼんやりと眺めた。

 天井のシミが、色々なものを想起させる。

「私、どうなるんだろう…………」

 ふと、独りごちる綺沙羅。最後に見た街は、怪物によって火の海となっていた。

 此処はそんな事があったような形跡はなく、綺沙羅にはどこか遠い外国にでも連れてこられたように感じられた。

 昨日の怪物のことや、住んでいた町の事が、ぐるぐると取り留めもなく頭を巡る。

 しかし、物思いは突然に中断された。

 昨日破壊された扉の向こうから、何者かの足音が近づいてくるのだ。

 また、あの不気味な怪物が来たのだろうか?

 綺沙羅は身を固くし、固唾を飲んで扉の方を見つめた。生臭い臭いが鼻を突く。

「こ、こいつは……ご、ごちそうだ」

 部屋に入ってきたのは、昨日とはまた別の怪物であった。

 それは人の顔を持っていなかった。魚ように鱗の生えた顔。首筋が割れて鰓がぱくぱくと開閉を繰り返す。生き物のようで、機械じみた部分を持っているのは、昨日の怪物と同様である。

 そして下腹部が大きく割れ、女陰にも似た肉襞が、ぐじゅぐじゅと涎を垂れ流している。 怯える綺沙羅。無機質な魚の目が綺沙羅を捉え、魚人はおぼつかない足取りでよたよたと綺沙羅の元へと歩み寄る。

「い、いやぁっ!!」

 腕を掴まれ、悲鳴を上げる綺沙羅。

 魚人はそのまま綺沙羅の上に馬乗りになると、生臭い臭いを吐き出しながら、綺沙羅の白い首筋に吸い付いた。

「んあっぁあっ!?」

 魚人の下腹部にある肉襞が、ぬめぬめと綺沙羅の身体を這い回る。

 やがて、その亀裂の中心から、ぐねぐねと触手のようなものが這い出てくる。

 いつの間にか、魚人の下腹部は巨大な磯巾着と化していた。

 ぐちゅぐちゅと猥褻な動きを見せながら、触手は綺沙羅の下腹部を這い回る。

 そして何本ものが触手が、綺沙羅の幼い亀裂目掛けて殺到する。

「ひうっ!!」

 粘液にぬめる触手、その触手に下腹部を舐め回され、綺沙羅は身体を大きく仰け反らせた。

 しかし、触手の動きは止まらない。襞の一つ一つを舐め回すように、丹念に、そして確実に綺沙羅の敏感な部分を刺激する。

 うずうずとした感触が下腹部を満たし、身体全体を快美感が浸食していく。

 手に触れられたわけでもないのに、乳首は赤くしこり立ち、体中から脂汗が滲み出していく。

「ひんぅあっ!だ、だめぇへぇえ!!やぁっ、そんな所舐めないでぇ………」

 譫言のように声を漏らす綺沙羅。少女の秘部も、今やどろどろに溶けだしており、触手と粘膜が渾然一体となって、淫靡な光沢を放っていた。

「あん、あんぅっ!いやぁ……」

 成熟した女のように、鼻から甘い吐息を漏らす少女。瞳が快楽に滲み、恍惚として虚ろな表情を見せる。

 次第に理性が麻痺し始め、我知らず腰を振る綺沙羅。

 その時、頃合いを見計らったかのように、魚人の下腹部から陰茎がのるりと吐き出され、綺沙羅の小さな淫裂を割り開く。

「くぅんっぁあ!!!」

 眉をしかめ、身体を仰け反らせる綺沙羅。

 触手が土手と言わず、谷底と言わず、秘部全体を舐め回し、太い陰茎は綺沙羅の内部を擦り上げ、ずるずると出入りを繰り返す。

 腰をこね回し、快感を貪る魚人。暖かな粘膜が陰茎に絡み付き、舐め回す。

「やぁあ……こんな、……あんっぅ!!」

 怪物に陵辱を受け、嬌声をあげる少女。

 薄暗い部屋に鱗が光り、醜悪な怪物の下で、白い少女の裸身が身悶える。

「やぁあっ!あん、あんぅ、あんんぅっ!!!」

 濡れた唇が小さく震え、それと共に身体が小刻みに振動する。

「すごいっ、んぅっ!お、お腹の奥が、ごりごりって……あんっ!!」

 腰の動きを加速させ、子宮を突き上げる魚人。はらわたを剛直で擦り上げられる度、綺沙羅の足は突っ張り、身体が激しく仰け反る。

「やあっ、やぁあああっ、あん、あんぅ、こ、こんな………あんっ!!あひぃぃぃいいっ!!!」

 首が反り返り、激しく痙攣を繰り返す綺沙羅。それと共に熱い精液が大量に吐き出され、綺沙羅の子宮を直撃する。

「…………はぁんぅ、あ、あつぅ」

 ごぷごぷと白濁した淫汁が溢れ出し、小さくなった陰茎がぬるりと吐き出される。

 じゅぶじゅぶと愛液を噴出させ、ぱくぱくと収縮を繰り返す淫華。

 気をやった綺沙羅はベッドに深く沈み込み、怪物もやがてその姿を消した。

 

 何度そんな事が繰り返されただろう。綺沙羅は混濁が増す意識の中で、ぼんやり考えていた。

 怪物達は様々な種類がいて、一匹ずつ現れるのでも、毎回違う怪物が来る訳でもなかった。時には何匹もの淫獣が、綺沙羅の子宮に精を放つこともあったし、間をあけて同じ怪物が来ることもあった。

 ただ、いくつかの確実なことは、怪物が来る前には必ず何かのエンジン音が聞こえると言うこと。怪物が来る間隔は一定していること。そして、怪物は綺沙羅の身体を思う様しゃぶり尽くすと言うこと。

 この場所には太陽の運行による一日はないが、そうしたことによって綺沙羅の一日は決められていた。

 そして、今や綺沙羅は心のどこかで、淫獣に依る快楽を求めていた。

 低いエンジン音が窓の外から聞こえてくると、綺沙羅は心で嫌悪しつつも女陰は熱くなり、身体の奥から淫らな欲望が湧き出してくる。

 そして今も、やがて訪れるであろう人外の快楽を求め、淫裂はじくじくと潤いを持ち始めているのだ。

 綺沙羅は変わり映えのしない天井を眺めつつ、自己嫌悪に嘖まれていた。

「………私、いつからこんなになっちゃったんだろう?」

 あと数時間もしないうちに、また綺沙羅の肉体を求めて淫獣が姿を現すだろう。そして綺沙羅はそれを受け入れつつあるのだ。

「…………来た!」

 何者かの足音が聞こえ、綺沙羅は複雑な思いで呟いた。

 しかし、今日はいつもの機械音が聞こえない。

 首を傾げる綺沙羅。

 その時、足音の主は綺沙羅いる部屋の前で立ち止まった。

 息を飲む綺沙羅。暗がりで足音の主は見えない。

 不意に、謎の影は声を発した。

「そこに誰かいるの?」

 それは、若い女性の声であった。

 

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